素材との対話でみつけた
自分らしさ
モノづくりの
新しいかたち。

Souが完成するまでの開発ストーリーやバッグに込めた想いを、
デザイナー・山口絵理子に聞きました。

まず最初に、新作バッグ“Sou”の特徴を教えてください

山口絵理子(以下、山口):“Sou”は使う人の身体に寄り添ったり、日常に寄り添うイメージで、友だちのようなバッグというのが大きなテーマだったのですが、つくり方はこれまでのバッグとは異なるプロセスでできたんです。一番の特徴は、ふんわりとした柔らかさと少し力が抜けたようなフォルムで、それがどこから来ているかというと、型紙なんです。型紙は、バッグをレザーでつくる前に模型をつくるための紙で、それが実は一枚でできている。ちょっとおもしろい生き物のような形になっていて、バッグの正面や背面、底面、マチの部分がどこになっているのかが一見わかりにくいのですが、『すべてがつながっている世界』というのを、少し哲学的に表現したいなと思う気持ちになってきて。

そのようなつくり方をするのは、初めてだったのですか?

山口:初めてでしたね。例えば、人気の“yozora”などは縦横比のサイズを最初に頭の中で想像して、具体的な長さまで決めてしまうんです。そこから最初に正面をつくりはじめて、次に底面、次にマチと、パーツを分けながらつくっていきます。だけど今回は、本当に教科書にないようなやり方を、自己流というのを見つけたくって、つくり方を変えようと思ったんです。


2wayで使える人気のyozoraシリーズ

そう思ったきっかけは、何だったのですか?

山口:毎年、その時の自分らしさを出してきたとは思っているのですが、ここ数年はマトリゴール(バングラデシュの自社工場)のベストを尽くしたい、という気持ちの方が勝っていたような気がします。コロナという厳しい状況であっても、ここまでできるんだ、というのを見せるのが自分の使命だとも感じていました。だけど、昨年それをお客さまに届けられたのではないかと思えたので、次は一旦工場のことは置いておいて、もっと、子ども心に帰って、全部自由に考えてみようと思ったんです。そこから少し力を抜いて、大きい型紙を広げてみて、手でこねこねしながら、できる形を模索しはじめたことが、今回のきっかけになっています。それはもしかしたら、自分に子どもができたり、環境が変わったりとか、色んな影響もあると思うのですが、今は力を入れるよりも、力を抜いていくことの方がいいのかもしれないと思ったんです。

力を抜くとは、どういうことでしょうか?

山口:力を抜くというのは、ある意味で素材を信じなければいけなくて、これだったら、こういうふうになってくれるよね、という信頼があるんですよね。でも大事なのは、力を抜いて自由につくったその後。バッグの向こう側には必ずお客さまがいるので、最低限の機能性だったり、最後のディテールは、何度も何度もミリ単位の修正を加えていきました。だから、ラフでシンプル、とは違って、最後は職人らしく仕上げていくぞ、という優しさと厳しさのバランスが大事なのかなと。

新しいつくり方の中で、こだわった部分はありますか?

山口:一枚の型紙でつくろうとする中で、少しだけこのバッグには陰影というのを出したいなと思ったんです。それが一番現れているのがマチの前後差で、それが日本らしい部分もあるのではないかと思ったし、立体的なやわらかさがより表現できたのではないかなと感じています。
結局、自分自身は日本やバングラデシュなどの東洋の価値観に影響を受けているので、日本的な要素はこの陰影に表れていると思うし、バングラデシュの象徴としては木のパーツを使いたいなと思うんです。その他にも、自分自身が小柄な女性なので、パソコンが入るサイズのバッグがいつも大きく感じているのですが、それも前面を少しスリムにすることで、少し印象を変えることができるのではないか、なども考えて。つくっていく中で、本当に様々な要素を考えました。
そのプロセスを振り返ると、今回、それらはまったく意図したことではなくて。これまでのバッグは頭の中で考えて持ち込んだものが多かったのですが、今回は、つくりながら、自分ってこういう人間なんだ、というのがわかったから、すごく自分らしいバッグだと感じています。そこにはお客さまのことを自然と考えていると思うし、それは、これまでたくさんのお客さまと出会ってきて、お店のスタッフたちとも話してきたからこそだと感じています。

自分らしさは、どのように見つけていったのでしょうか?

昨年の秋に発売したEmyは、バングラデシュの職人が今表現できる技術を詰め込んで、モノづくりのレベルを一段上げることができたと感じました。でも、それが一回終わったあとに、これ以上いくためには、もっと自分自身を掘り下げたり、自分の中でも戦いをしていかなければならず、自分らしさって何だろうと、おのずと自問しなければならなくなって。そうすると、自分はバッグのデザインを学校で学んだりしたことがないな、とか自信のなさみたいなものもすごく出てくるのですが、一方で、みんながこうだと思い込んでいることに対して、違う考え方もできるんじゃないかなと思える自分らしさもあるのではないかとか、ジュエリーやアパレルのデザインもしているからこそ、バッグだけには捉われない自由な発想もあるのではないか、と思ったり。このSouが自分らしいバッグだと言えるのは、そんな風に自分との対話をもっとも多くしながら完成した作品だから。あまりにも他者との対話をシャットダウンして自分をさらけ出しすぎてしまったので、否定されたらどうしよう、という恐怖は今まで以上にあります。それでも後悔していないのは、自分らしいなと思えるところに落ち着いたと思うから。これからもこのスタイルのモノづくりを続けていくことができたらと思っています。


昨年の秋に発売した
バッグEmyを持つ職人たち

工場にはどんな影響があったのでしょうか?

山口:サンプルマスターのモルシェドは、「このバッグは今までの自分の頭の外にある」という表現をしていました。なんでマチと背面がくっついているの?どうして一枚なの?とか、様々なことを疑問に思うわけですよね。だから、頭の中を広げられた、というか。工夫の仕方とか、技術の出し方も、ちょっと今までと違う方法でやってみよう、というスタンスで、これまで考えなくてもよかったことを考え始めた、という意味の進化はとてもありました。

デザイナーとして大事にしていることは何ですか?

自然からインスピレーションをもらう、ということはとても大切にしています。それは、先進国でも、途上国でも、その美しさは万国共通のものだと思っているから。でもバッグは、ファッションアイテムでもあるので、お客さまの身体に寄り添っているものだったり、その動作を一秒でも快適にすることも大切です。そして、それをどう実現するか、を考える時に、素材の魅力や職人の技術もとても重要で。その3つの要素が分断されるのではなく、掛け算してつくるということを大切にしていますし、これからもそれを大事にしていきたいと思っています。

実はこの後も同じようなコンセプトの商品の発売が続いていくんですよね?

山口:はい(笑)次も、その次も、今回のバッグ以上に私らしいね、と思ってもらえるような商品になっていると思うので、「あ、こういうことをしたかったんだ。」というのをすべて出た後に理解してくれると嬉しいし、特に昔から応援してくださっている方には喜んでいただけるのではないかなと思います。ぜひ楽しみに待っていてください。

今回ご紹介した商品はこちら

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Sou One Shoulder
¥39,600(tax in)

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Sou Mini Shoulder
¥33,000(tax in)

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color

Sou 2Way Tote
¥41,800(tax in)

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Sou 2Way Hand
¥36,300(tax in)

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