デザイナーの山口絵理子です。 作っている時のインスピレーションの原点やこだわりを ご紹介いたします。
縄文からのインスピレーション
新しいバッグを私のファッションラインERIKO YAMAGUCHIのために作りました。
名前は「JOMON bag」です。ユニークな名前の由来は縄文時代です。
縄文時代はさまざまな素材と、それを生かそうとする人の知恵が多く生まれ、開花した時代です。
この時代、まだ「ろくろ」を知らなかった人たちは、土器を粘土の「紐」や「帯」を利用して作っていました。紐を巻き上げる方法で、最初に底を作り、紐を積み上げていき、段差を滑らかに指で平らにしたり、そこに爪などで綺麗な模様を描いたりしていました。
私はその手法を読んだ時に、自分の幼少時代の思い出が浮かびました。
私の父は、陶芸をやっていて家で粘土をこねる機会を小学校上がる前からさせてもらっていました。
ろくろを扱うことがまだできなかった私は、歪な紐を何本も作ってテーブルに並べてそれをつなげながら徐々に高さを出していく作業にとても夢中になっていたのです。
それが今回のバッグの背景にあった私のテーマなんです。
そこにこれまで見たことがない世界が見えるかもしれないって内心大興奮しながら開発をスタートしました。
正解のプロセス自体、確立されている訳ではないので、暗中模索でした。やり始めた時に、最も大きな課題になったのは、「重さ」です。
最初のサンプルは冗談で「これ筋トレになるよ」って大笑いしてしまったくらい、4kg程度ありました。
本当に土器のような鞄になってしまった・・・・。
課題となる重さの他にも街に溶け込むパワーが欠如していました。
ここから正直に言うと行き詰まり、ただただこのサンプルを寝かせている時期もあったのです。
そこで再度、私は根本的に形状を変えて作れないかと思いました。
全てを紐で包むこみのではなく、一面を紐にしてみることで、軽量化と現代性がもしかしたら得られるかもしれないと。
その形が「クロスバッグ」でした。
「紐から、立体へ。」
バッグの正面のみを紐にし、その紐の太さを極限まで細くする。
さらに、これまで紐は、エンドレスに長いものを使っていたのですが、それを一段ごとに切断し、一枚ごとに型紙を作る、という異なる手法に挑戦しました。
何度も私は「職人泣かせ」だと言われてきましたが、これ以上に泣かせるプロダクトはありません笑。
延々と紐を革で包み、切断し、積み重ねるのです。
一本一本の革紐がどれだけ接近するのか、も非常に繊細な設計が必要でした。
密集した感覚が面白さを生みますが、密集しすぎると縫えないので(当たり前!)それもしなやかな革の選定や薄さが求められました。
面ができたら、ようやく、そこから鞄という3Dの立体を作るのです。
出来上がった時に名前は開発時から呼んでいる「ジョーモン」と決めました。でも、あまりセンスのいい名前じゃないかもしれないなあって思ってはいます笑。
ただ、開発した時のあのメラメラした情熱や職人との熱い議論を「そのまま」お客様に伝えたくて、敢えて、この開発時の名前のまま、発売したいと思いました。
時代を超えて愛されるものとはなんなのか。
私はまだまだそれを語るまでには至っていませんが、過去を振り返り、単純な蘇生ではなく、そのエッセンスを抽出して現代のライフスタイルとして提案してみる作業は、デザイナーとして非常にチャレンジングでした。
そのプロセスを苦しさと楽しさを含めて、愛する仲間たちと尊敬する職人と堪能できたことが、とても充実していました。
デザイナーとして、世の中にないものを生み出していきたい。
そんな情熱をずっとずっと持ち続け、形になるように実験を続けていきたい。
改めてそんな思いにさせてくれたバッグです。
Jomon Cross Bag
ジョウモン クロス バッグ
¥45,100(税込)
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