デザイナーの山口絵理子です。 作っている時のインスピレーションの原点やこだわりを ご紹介いたします。
今季のコレクションはチノ生地の”MATOU”から作り始めた。
シーズンを超えたERIKO YAMAGUCHIの代表作であるため、最初に着手し、その後に他の作品を作り、また戻る。
コレクション全体のバランス・軸足を決める作品のため、慎重になりながらも大胆なキャッチ力のある強さも感じられるものにしたくて、最も力と時間がかかった作品だ。
今季の世界観全体で、お客様はきっと「アシンメトリー」という言葉を使うと思う。
私の中で、規則的・規格内に収まるものではない歩き方・作り方がやっぱりERIKO YAMAGUCHIらしいのではないか?というのが、開発前のコンセプト段階で腑に落ちた考えだった。
大量生産のものづくりはすべて規格化され、左右対称であることが良しとされる。
宝石でももちろんカットは左右対称。ブリリアントカットのように。
カバンも前後差があるものは不良と考えられている。
しかし、そうした考え方の外にも「美しい」と思える世界が見つけられたらどうだろう?と考え続けながら、デザイナーとしての人生を歩んできたのではないかと思う。
規格、規定路線から外れた物の作り方が我流になった私。
絵を書かず、生地と遊びながら作っているデザイナー。
そんな私が左右対称のものを求めた先に、どんな喜びをお客様に渡せるだろう?
私は「外れ値」である国や人が好き。こうあるべきという考えが大嫌いで、そうした収まり方を強要する時代、社会、教育、組織が大嫌いだ。
誰かが作ったフォーマットが正しいなんて信用できない。
自分が心で感じた面白いな!っていう直感や見たことないな!っていう新しさ、なんだかワクワクするな!っていう心の声は、人間だけが聞こえる声のはず。
規格の外にはみ出すことを肯定したい。そしてはみ出す勇気を支えたい。 はみ出した先に、新しい美しさを提案できる人間になりたい。
そんな「自分の解剖」のような思考プロセスを経て「アシンメトリーが自分らしい」と考えるようになった。
左右対称ではないことへの反発や、批判、馴染みにくさは色々と出てくると思うが、”MATOU”はその挑戦をして良いと経営者としても判断し、今季のトップに置くことにした。
裾の高さも左右で変え、ポケットの構造も左右で違う。
左右が完全に非対称でありながら、着ると一つの作品のように完成する。
そんな新しい挑戦を感じてもらえたら嬉しい。
Matou Jacket Cotton Chino
マトウジャケット コットンチノ
¥64,900(税込)
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